日銀、資産買入基金を10兆円増額 物価安定のメドは「1%の上昇」


というニュースが流れている。アメリカで流行りのインフレ期待誘導広報活動だが、デフレ不況克服に本当に効果が期待出来るかは微妙。時間がないので、以下に簡単に論理を書く。

1.買い入れ 基金の額を増やしたからといって実際に購入するかは別な話。過去にも基金額を使っている訳ではない。購入額そのものを発表出来てないことも政治圧力によるポーズと取れる。2〜3円程度の円安に機関投資家心理を短期的に誘導するぐらいの効果しか期待出来ない。

2.不況へのテコ入れに結びつくかは別な問題。買い入れは長期国債であり、銀行の資産が長期国債から現金に変わるだけ。現在でも自国国債はBISでリスク債とはなっていないので、銀行のBIS状況は変わらない。つまり10日に書いた(http://www.tomabechi.jp/archives/51321633.html))ように現在は、BIS不況であり資金が銀行にない訳ではない。銀行が厳しいBIS規制により企業に貸したくても貸せないでいるのが元凶。だからしょうがなくて銀行は国債を大量保有している。日銀が国債を購入した資金で、現況のBIS規制下ではまた国債を買うしかない。もしくは米国債に買い換えろという意味かと勘ぐりたくなる。

どうも日銀周りのエコノミストは、過去に発行された銀行保有の国債を日銀が買い入れるのも、新規国債を直接日銀が引き受けるのも同じマネタリーベースの増大だから効果は同じと、貸借対照表レベルでしか考えられないようだ。実際の問題は銀行が貸したくても貸せない状況下にあるということが理解されてない。

今やるべきことは、日銀の直接引き受けによる財政出動で速やかに震災復興を進めることだ。それをせずに、どうしても今回発表のような銀行からの国債買い入れでマネタリーベースを増やすのならば、私が著書に書いたように、東北地方への融資をBIS規制の対象としない特例措置と組み合わせる必要がある。

私には今回の発表は政治ポーズにしか見えない。日銀の存在意義が政府の広報機関ぐらいしかなくなくなったと言われるだろう。本来日銀がやるべきことは別にある。


資産買い入れ基金
http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_m/index.htm