一昨日、日本赤十字社の震災義援金入金銀行口座(3メガバンクとゆうちょ銀行)への入金額2603億円のうち1740億円がまだ分配されていないことを書いた。この運用益は4ヶ月で少なく見積もって20億円と書いたところ、受け入れ銀行口座は普通預金であり、金利は低く、ゆうちょ銀行に関しては金利のない当座預金ではないかとの質問があった。

この数字は、平均元本 2000 億円として年利3%として、4ヶ月で20億円ぐらいという暗算をしただけの数字で数字そのものにこれといった根拠はない。ただ、通常、基金のプロの財務担当者は資金をそのまま当座や普通預金においておくはずがなく、元本を確保した上でも最低このくらいの運用はできているだろうという数字だ。

ただ、話題にすべきは、この日本赤十字社そのものの運用益の使途もさることながら、準備預金制度ならびにデリバティブにより新たに創出される資金の行方である。つまりメガバンクの預金口座に入った後に、その預金残高をレバレッジに生み出されるマネーサプライの行方である。

ここでデリバティブについてはとりあえず話題にしないで、純粋に銀行が生み出すマネーサプライだけを考えてみる。BIS規制では銀行の資金創出倍数は12.5倍であるが、新BIS規制などで、邦銀の現在の実質創出倍数は8倍程度である。

つまり2603億円の預金口座残高があれば、2兆824億円の貸出し資金が既に創出されているということである。通常の企業向け貸出し金利の4%程度で貸出しするなら、年間ベースで832億円、この4ヶ月で277億円の利益が銀行システムの中で既に生み出されているはずである。実際のところは、邦銀は外資系銀行と組んで既にデリバティブ取引で遥かに稼いでいるはずである。

つまり日本赤十字社を通じた国民の義援金で既に銀行は荒稼ぎしたはずである。メガバンク全てが稼いでいる訳だから、メディアも経団連もその支配下にあるわけだから、日本赤十字社からの義援金の配分が遅れていることが一時話題になっていたのが、何時の間にか、テレビで義援金配分委員会が配分に困っていて時間が掛かっているなどの言い訳番組は作られても、批判する大メディアがないのは当然といえば当然だ。

問題なのは、この4ヶ月間に本来被災者に行くべき義援金元本とそこから生み出されたマネーサプライが、配分を待つ間に銀行経由で海外のデリバティブに投資されていることはまず間違いないということだ。これは徹底的に当局が禁止すべきである。義援金は私たち国民が、被災者に渡すお金であり、被災者に渡るまでは、寄付者のものであり、義援金受入機関や銀行がその資金の所有者のように振る舞い、金融システムにより期間の利益を享受してはいけない。

2603億円の被災者の資金が4ヶ月間凍結されてきたのは、どう考えてもおかしい。正直、金融システムの関係者たちがわざと遅らせているとしか思えない。金融監督当局は、各銀行に立ち入り検査してでも、これらの資金の運用状況を国民に明らかにすべきである。

また、金融監督当局は、義援金を元本にして、銀行が準備預金制度により創出する貸出し金を、被災地への貸出しのみに厳しく限定すべきである。上に述べたように2603億円の日本赤十字社管理下の口座にある預金残高だけで、2兆円の貸出金が本来、東北地方に出来ているべきである。

繰り返すが、義援金は、被災者のものである。一時的に日本赤十字社などの銀行口座を通しているだけである。その資金の分配ならびに運用と運用益の使用法は被災者と寄付者のみが決めることであり、日本赤十字社や銀行が権限を持つことがあってはならない。

寄付金や義援金を震災被災者向けに集めている機関は他にも色々あるが、受け入れ口座に入金された途端に自分のお金のように振る舞う行為だけはやめてもらいたい。


PS 更にマクロなスケールで言うならば、私の周囲の義援金寄付者のパターンを見ても、物品の購入や旅行、交遊費などの消費支出を削っての寄付が大部分だ。それが被災者にすぐに渡り、消費活動に速やかに供されるならばいいが、日本赤十字社での例のように四ヶ月というスケールで金融機関で寝かされているならば、その間、もともとは消費に回っていたはずの資金が実態経済に貢献せず、不況の足を引っ張ることになる。義援金名目で経済から吸い上げられた資金が速やかに消費に回らないならば、経済を悪化させ、被災者をかえって苦しめることをよく理解されて、速やかに義援金を配分されることを強く要請する。