『内部表現』とは、我々の脳内に表現される自己と世界のモデルである。もちろん、唯識思想などに通じるインド起源の伝統的な立場に立てば、この内部表現そのものが宇宙である。いうまでもなく、内部表現は、物理的状態から情報的な状態(たとえば心理状態)などをすべて包含して連続的に存在している。その外側の外部世界があるか否かの論もクラスで言及するが、自我にとっては、内部表現の状態が書き換えられることは、そのまま、自我と宇宙を書き換えられるということになる。もちろん、必要に応じてそのような書換えを行ってきている職業も存在する。典型的には、医師で代表される治療家である。病の状態は、物理レベルから心理レベルまでのどこかのレベルにおける内部表現状態に、なんらかの理由で、本来生体にとって自然ではない状態である特異な『歪み』が連続している状態といえる。ところで、これを書き換えることは容易ではない。病になれば、病状態が現在の自我であるからだ。一度、内部表現状態に反映された情報は、それが、そのままホメオスタシスフィードバックの一部(つまり縁起の一部)となり、ステータスクォー(SQ)となり、維持されるからであり。あえて言えば、バラモンの伝統でアートマンと呼ばれている個の連続性は、まさに、宇宙時間におけるホメオスタシスによる情報状態の維持としてみることができる。もちろん、釈尊の論理では、この宇宙時間的連続性の維持された情報状態も、それがいかに長くみえても「永続」ではなく、したがって定義上「固有」ではないということになる。不滅のアートマンはあり得ないというのが、縁起の論理である。

 

 通常、西洋医学の伝統で成功してきているのは、現代の最新の新薬を含めて、この「アートマン」表層における情報状態を、物理的な働きかけや心理的な働きかけを用いて書き換えることである。それにより病の「症状」を抑えるという発想である。無論、病を生み出している内部表現状態の、より深層への影響を与えるのは難しく、現代医学の方法論が「対症療法」と呼ばれる所以である。インド起源のヨーガや気功などの方法では、瞑想法や大周天などの方法論で、もう一段深いレベルまでホメオスタシスフィードバックへの介入を試みる。成功すれば、病状態も「根治」に近いレベルまで書換えられることになる。

 

このように内部表現には、その働きかけの機能に応じて『次元』が存在する。単純化していえば、空間としての3次元、時間としての4次元、そして、抽象度としての5次元、さらに統合方向(ゲシュタルト次元)としての6次元などである。もちろん、これらの次元の言い方は、便宜的なものであり、機能側からみた分類であり、存在は、あらゆる次元に渾然一体となって連続的に存在しているのであるから、次元として分けて考えることそのものが、西洋的な伝統である。ただ、事実として、現代医学は、抽象度ならびにゲシュタルト度の特に低い物理的な空間における方法論にそれなりの成果をあげてきたものである。もちろんその限界に対して、例えば、最近になって、NIH(米国立衛生研究所)などが、「気功」の研究を始めるなど、『代替統合医療』という名目で、これを更に高次な空間に西洋医学の方法論を広げていこうという努力も始まっているものである。

 

もちろん、「内部表現」における、これらの抽象度、ゲシュタルト度次元の特に上がったところに、「アートマン」の特徴的な情報が存在しているのであり、これを書き換えるというのは、極めて困難である。ホメオスタシスフィードバック(縁起)の中心に近いところでは、その求心力は特に強く、ステータスクォーは強く維持されているからである。過去に「宿業」(カルマ)などといわれているのはまさにそれである。もちろん、アートマンが固有かつ永続的な存在ではないという前提では、こういったものは、「個」の「固有な」性質が連続しているとみるのではなく、これら個を定義する「関係」(縁起)が、ホメオスタシスフィードバックの求心力として、奥にいけば行くほど、状態が強く維持されているとみるべきであろう。机の上においてあるコーヒーカップが、何もしなければ、24時間で地球の表面自転軌道を一周し、365日で太陽公転軌道を一周し、そして2億年で、太陽系が銀河系を一周するというすべての運動が合成された複雑なベクトル空間の軌道を、机と共に、(そして地球と共に)、同時に行っている(つまりそういう縁起が働いている)ために、更に、一緒に動いている「私」にとって、コーヒーカップが机の上に静止しているようにみえるというのと同様である。コーヒーカップと机の縁起は、私が、介入して容易に移動させることができるが、これが、自我の深遠となると、容易ではない。

 

もちろん、バラモンの伝統で発明されたヨーガなどの技法は、この「容易ではない」アートマンレベルの内部表現を書き換える方法論として4000年以上伝わっているのも事実である。また、道家として伝わる秘伝功などにおいても、皇帝の医師たちが、文字通り「命懸け」で進化させてきた、病情報を深くから書き換える方法論として現代に伝わっている。これらの方法論に共通しているのは、身体性を用いて、高次なホメオスタシス空間に介入する技術論である。これが可能となるのは、脳幹における中脳、VTA領域における身体性情報伝達のドーパミン細胞神経束が高度な抽象思考を司る前頭前野まで拡張していた進化の結果と言える。また、前頭葉の先端が脳幹を巻き込むことにより、抽象空間に身体的臨場感を維持できる進化の結果とも言える。これにより、哲学者が高次な抽象空間を「触る」ことができ、数学者が複素数空間(2乗すると−1となる虚数を含む空間)を手で「操作」できるのである。同様に、格闘家は、将来起きる相手の動きに対して臨場感を感じることができるのである。物理空間は情報空間の抽象度の低い状態として定義すれば、この身体性をどこまで維持できるかは、より高度な抽象空間に臨場感を感じる技術がそのまま、数学や物理学、そして格闘技の訓練となり、また、代替統合医療の基礎技術となるわけである。いうまでもなく、これは、インド起源の伝統では、そのまま「サトリ」の技術でもある。同様に、これは圧倒的なIQ向上につながる技術でもある。

 

ドクター苫米地ワークスでは、これまで、ヨーガの方法論、道家医療気功の方法論、止観の伝統による方法論、密教加持、シャーマニズム、ミルトンエリクソンの技術、共感覚を利用した方法論など、様々な内部表現の書換え技術を研究してきたが、今回は、そのひとつの集大成でもあり、また、これら既存の方法を更に抽象化した独自の方法論の研究を行う。その要因である、1.抽象度・ゲシュタルト度の選択、2.選択した抽象度・ゲシュタルト度にあわせた身体の構築、3.内部表現の構築身体による臨場感生成、4.内部表現状態の直接的操作のそれぞれについて言及する。また、医師から患者の働きかけなど、自分自身以外の主体に対する内部表現書換えの前提であるR空間(臨場感世界としての現実世界)の直接的な共有技術についても言及する。端的にいえば、晩年のミルトンエリクソンが、車椅子に座ったまま、言葉を発することもなく、重度の患者の治療に成功したり、秘伝功治療において、一回の働きかけで重度の病を完治したりということが、「奇跡」ではなく、科学的に説明可能であるという立場で、それらのメカニズムについて、言及する。もちろん、理論的な側面のみならず、抽象化されたエッセンスを、実際に実践的に訓練する。特に、秘伝功医療気功や密教加持における「奇跡」の現場の「体験」から、それらの状況に共通する内部表現を維持する「意識状態」のメカニズムの解説と体感的な再現を試みるものである。これは、ドクター苫米地ワークスでも初めての試みである。もちろん、ドクター苫米地ワークスの原則どおり、科学的な立場を一切崩すことなく、これらの「奇跡」の再現性を研究するものである。

 

今回のクラスは、特に深い、(もしくは抽象度・ゲシュタルト度の高い)働きかけを中心とした訓練を行うので、難病治療を試みる医師や、これまでの薬物療法が効果を挙げていない精神障害を扱う臨床心理士などの参加を主対象とする。同様に、薬剤師、鍼灸師、整体師で、難病治療を手がける臨床家にとって特に有用なクラスとなる予定である。これまでのクラスにおける成果応用の報告から、強力な内部表現の書換えは、会社経営者、経営コンサルタント、教師、聖職者、プロ格闘家、スポーツトレーナーなどにも特に有用なことが報告されており、これらの職業のプロフェッショナルにも有用なクラスとなるはずである。6日間でワンセットの集中クラスであり、カリキュラムは、全くの初心者でも習得可能なものに設計している。6日間全日の参加が困難な場合は、4日間から参加可能である。また、日程中、欠席日がある場合は、4月に補講を日程調整の上、受講することができる。また、「英語脳」カリキュラムのリクエストが続いているので、参加者の希望により、英語脳カリキュラムも、必要に応じてクラスに統合する予定である。

 

今回のクラスは、他者の心理に特に強い影響を与える技術が含まれるため、クラスの参加者には、厳しい守秘義務と自己責任の同意が果たされることをあらかじめご了承を。これを理解している方のみ、ご参加お問い合わせを。参加初日に、自己責任の同意書と守秘義務の誓約書への署名をして頂いくことになる。また、学生の参加はお断りしている。

 

 

ハイパーマインドオペレーション特別クラス『内部表現書換えと奇跡の科学』− 

 

 日程

3月17(土) 18(日)13時から18時半 指導:苫米地

3月24(土) 25(日)13時から18時半 指導:苫米地

3月31(土)4月1(日)13時から18時半 指導:苫米地

 

  ご興味の方は、seminar@maxpec.com まで、氏名/年齢/住所/TEL、履歴の入った自己紹介、志望動機を書いて、お問い合わせを。今回のクラスも特に個別指導が必要なため、少人数の定員で早めに締め切るので、参加ご希望の方はお急ぎを。尚、HTMLメールはSPAMフィルターされる可能性が高いので、テキストメールで。住所・氏名・年齢・TEL・履歴のないお問い合わせには返信されないので、必ず全ての情報を。