電波法の立法者達の意図をしっかりと汲みたい。

苫米地貢 - Radiofly Wiki 

その技術者及び被許可者の思想方面及び環境、ことに誘惑等についても、周囲のことをお考えおき願つて、ぜひそういう方面の御考慮を佛つていただかなければならぬと思います。この中には單に技術的試験のみ強調されまして、思想的方面及び人格、その背景という方面の考慮が拂われておらないように思いますから、特にその点においては監理委員会事務当局、電波庁等におかれましても、十分御研究おき願いたいと存じます。」

その人間の特性、境遇、思想等もつけ加えていただきまして、国家のこの緊迫した状態のときにおいて、せめて無線の上において国を守るということについて、御考慮おきくださらんことを希望して、私のお願いを終ります

http://radiofly.to/wiki/?%C6%D1%CA%C6%C3%CF%B9%D7


苫米地貢

 日本において無線普及に貢献した黎明期の研究者・普及運動家。
 1922年、小型送信機を携帯して全国各地の学校等を巡歴、実験講演会を開催。
 衆立無線研究所を主宰。研究生の養成および、中等学校の物理教師と連携して学生生徒の無線知識の培養に努めた。

 資料 衆議院電気通信委員会公聴会 昭和25年2月10日 より

第007回国会 電気通信委員会公聴会 第3号
昭和二十五年二月十日(金曜日)午前十時二十七分開議

 出席委員
 委員長 辻寛一
 理事 飯塚定輔 高塩三郎 中村純一 橋本登美三郎 松本善壽
 淺香忠雄 中馬辰猪 土井直作 田島ひで

 出席公述人
 東京大学教授         鵜飼信成
 全国水産電気通信協議会代表  梅田一正
 日本アマチユア無線連盟理事長 大河内正陽
 日本船主協会労務部長     黒川邦三
 社団法人日本放送協会技術局長 小松繁
 時事新報社主幹        紺野四郎
 電気通信学会会長       篠原登 鈴木強 苫米地貢
 電波法対策委員会代表     宮入鎭
 無線機器工業会技術部長    安田英一
 東京放送株式会社設立準備委員 吉田稔
 委員外の出席者  專門員   吉田弘苗
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 電波法案及び電波監理委員会設置法案について

議事録全文はこちら

<抜粋:苫米地貢氏の発言部分>

○苫米地公述人 前のお二人が電波法案に反対の御意見をお述べになりましたので、つり合い上今度は賛成の意見をちよつと申し上げます。
 私が電波法案に賛成を申し上げ、またぜひこれを本国会に通過さしていただきたいということをお願いいたしますには、少しく歴史があります。苫米地は三十七年間、無線及び放送に関する啓蒙運動をいたしておりまして、ただいまのNHKなども、私創立委員の一人でございました。またごく最近まで放送協会に職を持つておつたものでございます。と申しながら、別に放送協会を援助するのではなく、きようは純然たる電波の問題だけについて申し上げるのですが、なぜ賛成と申すかと申しますと、かつて私どもが放送以前にいろいろ電波を出そうといたしまして、願書を逓信省に出すにつきましても、たいがい半年ないし一年かからなければ、その許可はおりて参りません。学校等において予定の時間に電波を出したくても出せないので、ついその時間に無線電波を出す。そうすると早速逓信省から告訴を受けた。その回数においては、おそらく日本で最も古く、最も多いのでありまして、始末書は絶えず謄写版に刷つておいて出さなければならぬというような被害者でございました。それほど昔の無線法規というものは幼稚なものでございまして、日本のラジオ文化、無線文化というものについても、何ら顧慮しないものでございましたが、今回提案せられましたところの法案二つを拝見いたしますと、隔世の感があり、非常な進歩をいたしまして、日本の電波文化に対して非常な貢献をするところの画期的な法律だと存じまして、私はぜひこれを通過さしていただきたいと思います。なおこれが通過いたしますならば、将来はフアクシミリあるいはテレビジヨン等の問題も出て来、また放送ではなく商業無線としまして各方面、あるいはまた漁業無線等の拡大が行われ、いろいろの意味において日本の文化及び産業に多くの貢献を果すことができると存じますので、これを非常に喜んでおるものでございます。但しものにはやはり行き過ぎという問題がありまして、この職前におきますところのがんじがらめの法律から、今度は何でも民主主義というようなぐあいに、右から急に左に行き過ぎまして、この法案の中にも若干の欠陷があるやに思われます。
 それは後ほど述べるといたしまして、どういうわけで私がそれをつくのかと申しますと、今までは電波に対する取締りが非常に嚴重でございました。ところが今回は非常に開放的になつたのでございますが、現下の国際情勢、及び日本の国内情勢から見ましても、武器を持たざるところの日本に、せめて思想をもつと固めて参らなければならぬときに、日本の今の思想界というものは混沌としております。このときにあたりましてこの法案を見ますると、中には無線局、実験無線局あるいはアマチユア局等を大巾に許される問題があります。これはかつての私の体験からはなはだうれしく、感謝しておるのでありますけれども、この中にただ一つの規則として、その技術方面の試験のみを行つて、これを許可するがごとくに解せられる筋があるのであります。私はこのアマチユア局にせよ、実験局にせよ、あるいは極端なことを言うと、日本海方面における漁業無線等につきましても、もこれを許可する場合には、その技術者及び被許可者の思想方面及び環境、ことに誘惑等についても、周囲のことをお考えおき願つて、ぜひそういう方面の御考慮を佛つていただかなければならぬと思います。この中には單に技術的試験のみ強調されまして、思想的方面及び人格、その背景という方面の考慮が拂われておらないように思いますから、特にその点においては監理委員会事務当局、電波庁等におかれましても、十分御研究おき願いたいと存じます
 次に七十三條の中に、毎年一回、あらかじめ通知する期日に検査を行うというようなことがございますが、これも三十七年間のいろいろの経験から見まして、私はこういつたふうに幾日幾日にお前のところに検査に行く。これはあらかじめきまつた日に検査に行くというような方法はなまぬるいのである。要するに定期検査は必要であるが、場合によつては不定期においてもこれを検査し得るだけのことが、法案に検査をするということが入つておる以上は、もう一つその追加が必要であるのではないかというふうに考えられるのであります。
 その次に監理委員会の設置法案の方で、第三十七條でございますが、そこに電波観測所を設けるという問題がございますが、その電波観測所の固定的なものは、日本では北の方に多いのであつて、日本を全体的に見て、九州方面は少いように私は考えておるのであります。なお陸上にこういう固定観測所を置くだけでは足りないのであつて、むしろ移動観測所をもつと多く併置すべきである。また海上にも、日本海方面に特に移動船舶観測所を置がなければならないのだということを、私どもその方面に三十七年間従事いたした者から見ますと、ややそこに不安なきを得ないのであります。
 今私がここに立つて申し上げました問題は、結局他の人が語り養したところでありますから、すべてを省略をいたしまして、集約して申しますならば、現下の国際情勢の上から、電波の監督及びその指導という面について、くれぐれも御注意置きあらんことを希望するのは、たたそれだけであります。なおもう一つつけ加えてお願いいたしますのは、電波法の第四十六條に「無線従事者国家試験は、無線設備の操作に必要な知識及び技能について行う。」これは先ほどアマチユア局及び実験局について申しましたのと同じ精神において、これも無線設備の操作に必要な知識、技能というもの以外に、その人間の特性、境遇、思想等もつけ加えていただきまして、国家のこの緊迫した状態のときにおいて、せめて無線の上において国を守るということについて、御考慮おきくださらんことを希望して、私のお願いを終ります