大阪府茨木市の監禁事件現場を見てきた。この手の事件は実際に現場を見てみないと、どんな心理風景があったのかが見えてこない。現場は、交通量の多い幹線道路沿いで、すぐ裏は人通りの多い商店街。また、商店街の民家の2階からは現場のマンションの部屋の様子がお互い視認できる関係にもある場所だ。またマンションそのものも、東京でいうマンションというよりはアパートという感じの建物で壁の防音などはないに等しい。マンションのビルのオーナーが村本卓也容疑者の実父ということで、両側の部屋が空室の部屋を監禁場所として選んだようだが、上下の部屋やそれぞれ隣の隣の部屋ぐらいまでも大きい声を出せば容易に声が聞こえるような造りの建物だった。つまり、もしも助けを呼べば容易に助けを呼べるような状況だったと思われる。外出するときは、皮ベルトで縛ったりしてトイレに押し込んでいたという話も出ているが、数ヶ月間に渡ってまったく大きな声で助けを呼んだり、容疑者が外出中にトイレの扉を蹴破って、窓を割って助けを呼ぶことができない状態だったという可能性は低い。実際、「調味料で飢えをしのいだ」という報道もあり、調味料を手に入れられる状況であったならば、窓を割って助けを呼ぶことはできたはずである。

周囲の聞き込みからも数ヶ月間の間に、なんらかの助けを呼ぶ声などが聞こえたことはなかったようであり、これは、心理的に被害者は容疑者の支配下にあったことが示唆される。推測するに、まずは、押収された棍棒や木刀などで暴力を振るわれたり、脅されたりという中で、いわゆる「ストックホルム症候群」の状態に陥り、その状態下で、「ご主人様」と呼ばせたり、飢餓状態に置いたりとする心理的にも物理的にも支配状態を続けることにより、主人と奴隷のような隷属状態が固定化されるという古典的な洗脳状態となったと推測される。また、北海道や東京で犬の首輪などを使った監禁を行って逮捕された、いわゆる監禁王子の事件との共通性を質問されるが、このどちらにも共通しているのは、長期間の監禁ということであるが、恐らく犯人の心理的共通性としては、どちらも広い意味での「ひきこもり」であるという点だろう。ひきこもりは通常、社会に対して家やマンションの壁の中に閉じこもることにより、自分の城を心理的につくり、そのなかで快適な生活を維持する。通常そのキャッスルにおけるサーバントは、人形であったり、アニメであったりするわけであるが、この二人の場合は、家が資産家であった為に、生身の人間をサーバントとすることができたということである。